【書き起こし】平河エリさん 「聴く国会」

プロから直接学べる音声メディアVOOX。10分×全6回のコースのうちの、第1話「総理大臣と国会、どちらが偉い?」を完全書き起こしで紹介。ブログ「読む国会」で話題の平河エリさんが、議会政治の仕組みや、さまざまな疑問をフラットに解説していきます。

(オープニングジングル)

平河:

皆さんはじめまして。政治の解説メディア「読む国会」主催、ライターの平川エリです。今回より6回にわたってお送りする「聴く国会」では、議会制民主主義とは何か、国会の仕組み、参議院の存在意義など、政治に関するよくある疑問を、特定の政党や特定の候補者に触れず、フラットに解説して行きます。

本題に入る前に少々私の自己紹介から始めさせていただきます。私はもともと2016年、安保法制などをきっかけに書いたブログ「読む国会」で注目され、ライターとして議会政治や選挙など、政治に関わる分野を専門に活動してきました。現在でも朝日新聞や講談社、扶桑社さんなど、各社のウェブ媒体で執筆し、またこの度、本も出版させていただきました。そもそも私がこのように政治メディアを始めるきっかけとなったのは、2016年の安全保障法制、いわゆる安保法制でした。このときの与野党で非常に大きな対立が起こり、憲法解釈やあるいは法律の解釈、政府がどのような憲法解釈を取ってきたのかに対して、非常に大きな論争が巻き起こりました。

しかし、メディアの中ではこういうふうに対立してますとか、与野党がいがみ合ってますというところだけがクローズアップされて、なぜ与野党の対立が起こっているのかというところについて、ほとんど報道しないように私は思いました。そのような憤りから、私は国会の議事録、あるいは法案の案文といった生の情報を見て、しっかりそこに何が書いてあるかということを知らなければならないと思い、ブログを始めるに至りました。


国会はおもしろい

その後も様々な法律・法案が成立をし、あるいは否決をされてきました。それぞれワイドショーで見れば、一つの法案で誰が反対してるとか、また国会でガミガミ言ってるよというふうに思われがちかもしれないんですが、しかし反対するには反対する理由もあるし、提出するということは提出する理由もあるということを深く考えていくと、お互いの立場が理解できるのだと私は考えています。ですので、政治とか国会とか、あるいは法律ができるという時に、できるだけ生の情報、本当に長い文章ですし複雑な文章ではあるんですけども、そういった生の情報。そして原文とか、あるいは英語の論文とか、そういったものも含めてしっかりと見ていくことで、一つの法律に対してどのような解釈があって、どのような論争があるのかということまで理解できると、私はこの5年間で学ばせていただきました。政治とか国会というのは複雑ですし、ともすれば単純化しやすい部分であると思います。しかし、しっかりと難しいことを、国会の質疑とか、国会議員と大臣がバトルしているのをちゃんと聴くとかしていけば、そこにはもちろん人間のドラマもありますし、そして法律というすごく高度なものを使ったディベートというものもあります。ですので、私は国会を見るということは非常に面白いし、そして勉強にもなるし、あるいは最も最新の様々な知見が得られる場所ではないかなと思っております。

このように私は、政治と国会のメディアというものを5年ほどやってきましたが、5年ほどやって、本当に様々な意味で知識と知見がついたと思っておりますので、是非これを聞いている皆さんも60分間を聞いていただくと同時に、よろしければ国会やあるいは議事録などを見ていただいて、本当に深く、自分がワイドショーで見ていたさわりのヘッドラインの部分とどのように違うのか、ということを知っていただけるといいなと思っております。


国会と総理大臣

そもそも、なぜ国会や政治について知る必要があるのでしょうか? 議会制民主主義というのは非常に不思議な仕組みであると私は考えています。それは立法府、つまり国会の多数が総理大臣を選ぶという仕組みであるにもかかわらず、三権分立、つまり立法府・国会と、行政府・総理大臣および内閣が対立する構造になっているということです。そもそもこのように、日本の議院内閣制における三権分立というのは、極めて不思議な仕組みになっており、普段ワイドショーやニュースなどではなかなか仕組みの部分、なぜ国会が存在するかという部分については触れられることがありません。

第1回は、総理大臣と国会のどちらが偉い? という疑問から考えていきたいと思います。それぞれの定義から確認していきましょう。総理大臣とは内閣を組織し、閣議を主宰し、行政の指揮監督を行って、内閣府の長として所管の事務を担当するという役割を持っています。対して国会とは、日本国憲法の定める国の議会として、国権の最高機関と言う尊称が憲法上与えられています。簡単に言えば国会というのは立法機関、つまりルールを作る機関です。そして総理大臣というのは、そのルールに従って日本国の運営を行う組織です。そもそもこの総理大臣と国会どちらが偉いのかと言うと、憲法上は国会が国権の最高機関として定められています。さらに総理大臣を選ぶのは国会であるということを考えれば、国会というのが日本において最も重要な、そして最も重い権威を負った機関であると言えるでしょう。

しかし、日本においてはほとんどの法律が内閣提出立法、いわゆる閣法によって決められています。これはルールを作る側、すなわち法律を作る側においても、総理大臣が非常に大きな役割を負っているということです。そして先ほど申し上げたとおり、国会の多数が内閣総理大臣を選ぶという制度上、内閣総理大臣が提出する法案というのは、与党の賛成によって成立することが非常に多いわけです。すなわち、政府与党というふうに言われますが、内閣総理大臣と内閣、そして国会の多数である与党というのは一体となって法律を作り、これを運営しているという役割を持っています。そのように考えれば、一般の人々が国会の役割というのをあまり感じられず、そして総理大臣というのが日本のすべての責任を負っていると考えても、やむを得ない部分があると思います。


国民一人ひとりが担うこと

そもそも三権分立とはなんでしょうか? もともとですね、世界のすべての国、ほとんどの国においては絶対王政という形で、1人の王がすべての権力を持つという仕組みで運営されていました。しかしイギリスにおいて、この絶対王政だけでは国民にとって良い政治が行われないということで、王制から立法、そして裁判権である司法を切り離すということによって成立したのが三権分立と言われています。最初は、行政権というものを国王が持っている、そして立法権、司法権、あるいは法律を審査する権利というものを切り離すことによって、お互いが権力を監視しようという形で成立したのが三権分立だったわけですが、イギリスにおいては、その後首相という役職が誕生し、この首相が王に代わって行政を代行する。そしてこの首相、日本における総理大臣とも呼ばれますが、国会の多数がこの首相を選ぶということが決まるにあたって、国会が総理大臣も選ぶし、法律も作るしというふうに、複数の役割を負うようになったということです。このように考えれば、議員内閣制というのはある意味いびつな仕組みであり、不思議な仕組みであると考えても良いと思います。

そもそも皆さんも、行政権という言葉をあまり普段生活していて、聞くことはないんじゃないかと思います。行政権というものも定義は難しいんですが、これは先ほど述べた絶対王政の中から、立法と司法を切り離して、残った部分が行政であるというのが一般的な通説です。つまり三権分立とか権力分立というのは、お互いがお互いを監視するために、権力を切り離すことによって成立している仕組みであると言えます。つまり、皆さん一人ひとりが、総理大臣が法律を提出する、そしてそれが国会で審議が行われるという時に、どのような審議が行われているのか、それをしっかりと監視をしていく必要があります。単に国会の少数だけが監視をするのではなくて、国民一人ひとりが、政府が提出している法案について審査をし監視をすることによって、本当の意味での三権分立が成立するのではないかと私は考えています。

このように「聴く国会」では、全6回に渡って政治に関するよくある疑問を1つずつ解説していきます。以上第一回、お相手はライターの平川エリでした。

(以上書き起こし終了)

「聴く国会」  全6話 60min


1. 総理大臣と国会、どちらが偉い?
2. 国会の仕組
3. 国会議員の仕事とは
4. 野党の役割
5. 選挙制度と国会
6. 武器としての政治

平河エリさん
早稲田大学卒業後、外資系IT企業にて勤務し、その後コンサルタントとして独立。ブログ「読む国会」が話題となり、ライターとして議会政治、選挙などを専門分野に活動。朝日新聞、講談社、扶桑社、サイゾーなど各社媒体で執筆。『25歳からの国会: 武器としての議会政治入門』著者。



早速VOOXを聴いてみよう!

VOOX Apple App StoreDownload VOOX on Google Play