【書き起こし】中田華寿子さん「伝わる組織のコミュニケーション」

プロから直接学べる音声メディアVOOX。10分×全6回のコースのうちの、第1話「暗黙の了解から卒業しよう」を書き起こしで紹介。スターバックスコーヒー ジャパンやライフネット生命の立ち上げを成功させたマーケターの中田華寿子さんが、膨大な情報の中で自分たちが伝えたい情報や意思を、伝えたい相手に確実に届けて、人々の気持ちを動かし、行動につなげることができるのか、「伝わるコミュニケーション」を解説します。

(オープニングジングル)
中田:

皆さんはじめまして。アクチュアリ株式会社代表取締役の中田華寿子です。今回よりお送りする「伝わる組織のコミュニケーション」では、伝えたい情報や意思を伝えたい相手に確実に届けて、どうしたら生活者の気持ちを動かし、行動に繋げられるのかということを皆さんと考えていきたいと思います。皆さん日々、仕事の場でも個人としても対面でもネット上でも、起きている時間ずーっとコミュニケーションされていらっしゃると思うんですけども、多分、全く意識せずに漠然とコミュニケーションをとっていると思うんですね。でも「伝わる」をちょっとだけ意識することで、みなさんの事業目標の達成とか、自己実現ができたり、夢を引き寄せることができるというふうになると思います。

初回なので、私の自己紹介から参ります。大学卒業後、広告代理店に入社して、その後スターバックスコーヒージャパン、マンツーマン英会話のGABA、あとはネット生保のライフネット生命。それぞれ事業の立ち上げとIPOにマーケティングとコミュニケーション担当として携わりました。0からサービスを立ち上げる厳しさと同時に、それ以上に、お客様に新しいサービスが受け入れられる醍醐味というものをすごく感じました。得意とするのは、おのずと0からサービスを立ち上げてコミュニケーションを活用して、世の中の人との間に心地よく、一瞬で終わらない持続性と対話のある双方向の関係性を作ってきました。すなわち、それがブランド構築と言えるのかもしれません。

経験値から実感したこととしては、どんなに長い歴史のある業界でもコミュニケーションのやり方次第で、前例のないサービスは定着できるということなんですね。やはりコツコツコツコツと戦略を練ってコミュニケーションをしていくことで、確実に皆さんのゴールに一歩ずつ近づいていくと思います。例えばスターバックスコーヒーは、もともと喫茶店がある文化のところで、新しく日本に来た甲斐カルチャーなんですけれども、喫茶店だとタバコが吸えたり、男性の方がビジネスの合間にちょっと利用するような場所だったと思うんですけれども、それが禁煙でタバコが吸えない喫茶店って当時はすごく珍しくて、本当にそれでお客さんが来てくれるのかという話もあったんですけども、やはり品質を第一に考えるということで禁煙にしたり、そのことでやっぱり女性の方でもコーヒーを飲みたいという方はもちろんたくさんいらっしゃったので、女性のお客様が増えたり、子連れの方、シニア層、そんな幅広い方々がエスプレッソをベースにした、セルフだけど一杯ずつ好みにカスタマイズできる新しいコーヒーのあるスタイルというものが定着していった。それもほとんど広告出稿をしない全都道府県に浸透していって、多分今1600店舗ぐらいあると思うんですよね。そういったことがコミュニケーションで実現できました。

一方ライフネット生命では、生命保険って実は100年も前に福沢諭吉さんが日本に持ってきたビジネスのコンセプトなんですけれども、生命保険で一生に1回か2回入るものなので、対面で営業職員の方から営業を受けて入るのが当たり前と言うような中で、当時金融庁から44社目の認可を取得して、生命保険はネットでも簡単に入りたいと思った時に自分で入れるんだよ、というような新しいスタイルをSNSをメインとしたコミュニケーションをフルに活用して、今コロナ禍でも業績をすごい伸ばしているというふうに聞いています。


ストーリーをアセットに


いずれもやはりコミュニケーションの力で長く存在が認められるブランドということで、たぶん一回のヒットを飛ばすことって、そんなに難しいことではないかと思うんですけれども、やっぱ5年10年できれば100年ぐらい続いていくようなビジネスとかサービスを立ち上げるという事は、非常に意義のあることで、スターバックスコーヒーにしろ、ライフネット生命にしろ、ビジュアルアイデンティティ、ロゴですよね。グリーンのロゴを見ると「あ、あの会社だな」って思い出してくれたり、サウンドを聴くと「あの会社だな」とイメージを持ってもらおうということはすごく大事だなと思います。そうすることで、やっぱ世の中に浸透して愛されているっていうような状況を作っていくことができて、それがやはりビジネスの基本として、アセットとして残って行くというふうに思います。

この音声を聞いていらっしゃる方の中に、スタートアップ企業で勤めていらっしゃる方とか、あとは自分の部署で新しいビジネスとかサービスを立ち上げていらっしゃる方ってたくさんいらっしゃると思うんですけれども、そのような時って、やはりあるのは大きな夢ですよね。夢だったり、うまくいったことうまくいかないことを含めて、ドラマチックなストーリーがたくさんあると思うんですね。それは非常にスタートアップとか、新しいサービスのアセットになるものだと思います。あとは実は三重苦って私言ってるんですけれども、認知度もないし、先行する大手競合があったり、予算もない。一方でこのビジネスに投資をしてくれた投資家の方からは「いつ黒字化になるの?」というプレッシャーを常に受けると思うんですけれども、そんな中でもさっきお伝えした、そのドラマチックなオリジナルのストーリーをアセットに、それをレバレッジして伝えていく、広く拡散して行くということがコミュニケーションの力になると思います。

そのときに私がこだわるのは、伝えるではなくて伝わるなんですね。企業からの相談、結構いろんなものがあるんですけれども、こういったものがあります。「なんでこんないい新商品使ってもらえないんだろう」と。「いいねはSNSでしてくれるのに買ってくれない」と。当たり前ですよね。多くの人にとってその商品、自分の生活に関係ないと思ってる人も結構多い。であったりとか、プレスリリース一生懸命書いてたくさん出しているのに、マスコミに取り上げてもらえないと。当たり前だと思いますそれも。何故かというと、記者の方って一日数百通のプレスリリースを受け取っているわけですよね。その中から、あなたの会社のプレスリリースをいいねと思って記事にしてくれる確率ってなかなか高くはないのかもしれない。あとは思ったように、いい人を採用できないとか、部下が思ったように動いてくれないんだという経営者の方、人事部の方のご相談いただくことがあるんですけども、まあ、それも当たり前かなと思うんです。やっぱり多くの働きたい人にとって、今いろんな会社があるので、「そんな会社知らないよ」であったり、社員の方でもやっぱりこの会社は今どっちの方向を向いているのかということがわからないと、やっぱり自分の時間とかエネルギーとかをコミットして働くというのは、なかなか難しいという状況があると思います。

このような場合、経営者とか担当者は、伝えてはいると思っているんですよね。でもそれはコミュニケーションではなく、極端な言い方をすると、一方的な情報、ゴミのバラマキということで、やっぱり伝えてる相手の時間の無駄遣いであったり、世の中あらゆる情報があると思うんですけども、まったく伝わる状況を作っていないということがあると思います。

世界はみんな他人


この第一回目の1番大事なポイントをお伝えしたいと思います。「伝わる」が達成できない理由として、わかってくれるであろうという暗黙の了解、これをやめようということをお伝えしたいと思います。分かってくれるであろうとか、僕たちの話聞いてくれるであろう、聞いてくれるのが当たり前っていうような身勝手な思い込みが、伝わらないコミュニケーションを増産しているので、大事なことは、私達は分からないもの同士なんだという認識を持っていただくことがすごく大事なんではないかと思います。

これって夫婦間の家族の甘えもあると思うんですよね。多分多くの方、ご夫婦の方、ご経験あると思うんですけども、「そこにあるあれ取ってよ」っていう。まあ老夫婦じゃないですけども、もうこれだけ長く居るから、あうんの呼吸で分かってくれるよねっていうコミュニケーションをされることが多いと思うんですけども、やっぱそれは誰に対して言ってるの? 奥さんなの、旦那さんなの、子供なの? 具体的に何をして欲しいのであるとか、何故それが必要なのということをちゃんと伝えないと、伝えられた人は今忙しいのにということで、ちょっとイラっとしたり、まあ半ば諦めつつ、相手の伝える力の劣化を理解することで、劣化を手伝っているというようにも言えると思います。

企業にも同様の甘えというのはあると思うんですよね。例えば社内だけで通じる隠語を使い続けてたりとか、カタカナ用語をすごく今使われる方多いと思うんですけども、それって本当に伝わったような気持ちにお互いになってるけど、その内容とか言葉が持っている深い意味とかをちゃんと共有できているのかというようなところは、もしかしたら確認していった方がいいのではないかなと思います。あとは一方的に言いたいことだけを言う、書く。これまあ、私とかも反省しなくてはいけないことだと思うんですけど、言いたいことがたくさんある人こそ、どんどん新しいことを言っていく訳ですね。そうすると、それを聞いてる人は「あれ、前回こう言ったのに、今回はまた新しいことを言ってる」とか、何がホントは言いたいことなんだろうということが全然伝わらないという状況があって、最悪なのは伝わっていないということが認識できないで、もうずっと何年も同じようなコミュニケーションを継続していることで、結局組織がバラバラになって人が辞めていく。なんでなんだろう? というふうに考えてしまうというようなことがあります。

コミュニケーションは短時間で自然に伝わることはないんですね。やはり戦略的に考えていかないと伝わりません。伝わるのは「世界はみんな他人」を前提とした、暗黙の了解のない、戦略に基づいたコミュニケーションのみです。そこで「聞いてくれるであろう」という楽観的な思い込みを捨てた上で、あまり難しいロジックではなく、一つずつ意識して実践すれば確実に今より伝わるポイントを残りの5回でお伝えして行きます。この講座の2回目は、相手のことを知る、Whoですね。3回目は何を伝えたいのか知る。4回目は顔の見えるコミュニケーション。5回目は伝わる仕組みづくり。そして6回目は伝えるから伝わるへということで、この5つのテーマに沿って、伝わる組織のコミュニケーションを考えていきます。では今日は、伝わるはずという思い込みを捨てたところで、また次回お会いしましょう。中田華寿子でした。

(以上書き起こし終了)

「伝わる組織のコミュニケーション」全6話 60min
1. 暗黙の了解から卒業しよう
2. 相手のことを知る
3. 何を伝えたいのかを知る
4. 顔の見えるコミュニケーション
5. 伝わる仕組みを作る
6. 「伝える」から「伝わる」へ

中田華寿子
上智大学文学部卒。電通ヤング・アンド・ルビカム株式会社を経て、スターバックスコーヒー ジャパン株式会社に参加、広報室長、執行役員として同ブランドの日本市場での立ち上げ、全国規模への拡大、浸透に携わる。株式会社GABA マーケティング部門長・常務執行役員を経て、2008年ライフネット生命に入社、2011年より常務取締役、2017年6月退任。3社のIPOに携わる。香川県三木町総合戦略策定副委員長、兵庫県加古川公開事業評価の外部審議委員をつとめる。動く政策シンクタンク構想日本理事。

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