【収録裏話】井上一鷹さん:瞬発力と持久力

今週のVOOXの新着コンテンツは「集中」をテーマにしたものだ。スピーカーの井上一鷹さんは、メガネのJINSで「JINS MEME」という集中力を測定できるメガネを開発したり、Think Labという仕事に集中できるコワーキングスペースを立ち上げたりしてきた方である……

陸上競技の100メートル走を見ていると、スタート前がいかに重要かを思い知らされる。ウォーミングアップで音楽を聞いたり、目を閉じて精神統一をしたり。スタート前にも、気合いを入れるような動作もあれば、深呼吸してリラックスしようとする動作も見られる。

そして試合後のコメントを聞いていると「試合に集中することだけを考えていた」など、「集中」がキーワードになっていることがよくわかる。

今週のVOOXの新着コンテンツは「集中」をテーマにしたものだ。スピーカーの井上一鷹さんは、メガネのJINSで「JINS MEME」という集中力を測定できるメガネを開発したり、Think Labという仕事に集中できるコワーキングスペースを立ち上げたりしてきた方である。

井上さんの話しは、ファクトに基づいたデータを駆使されるのでどれも非常に納得感があるのだが、仕事における集中の見方が変わった。

仕事になぜ集中力が必要か。それは時間あたりのアプトプットを最大化するためである。有限の時間で最大の成果を出す。そのためにこそ集中力が求められるのだ。それはあたかもスポーツにおける短距離走のように、瞬発力を発揮するために必要なものだとイメージしていた。なので、大事な仕事に取り組む際には、「よし!」と選手がスタートラインに着く時のように気合を入れ直し、精神統一して仕事に向き合おうとする。そんな爆発力を集中力としてイメージしていたような気がする。

しかし、仕事で求められるのは瞬発力だけではない。改善を重ねながらしつこくやり抜く力、あきらめない力、そしてやりたいことを実現させるために継続させる持久力が求められるのだ。

この瞬発力と持久力を考えると、夏休みの宿題を思い出す。1ヶ月以上時間があるのに、取り掛かるのは、最後の数日になってしまう。多くの人がそんな経験をしたはずだ。時間があるからと油断しているといつの間にか、夏休みも終わりだ。そんな暗澹たる気持ちのなか、火事場の馬鹿力を発揮して、どうにか宿題に取り掛かる。これはまさに瞬発力の賜物である。

仕事でも、この夏休みの宿題のようにタスクを片付けてしまうことがあるだろう。僕の場合、事務処理がいつも後手後手になり周囲に迷惑をかけている。原稿なども締め切り間近に仕上げることが多い。「切羽詰まると、妙な力が湧き出る」は真理かもしれないが、大きな仕事を成し遂げようとするには、この動物的な、外界から迫った危機に対応する力に頼るだけでは通用しないであろう。

そもそも火事場の馬鹿力とは、外発的な要因で絞り出された力である。自分の内面から湧き上がる力ではない。なので外発的な要因、つまり危機がなくなると自分の力は出なくなる。内発的な力は、外界からの刺激とは無関係に湧き出る力である。それは自分の内面に宿る力なのだが、井上さんはこの話に「集中力を越えるもの」というタイトルをつけられた。ネタバレになるので、話の詳細は書かないが、自分の中から湧き出る力には、「集中しよう」という気合は全く必要ない。やり続ける。その動機がしっかりと内部に根を下ろしているのだ。

目の前の差し迫った危機が生み出す集中力。それに対して、遠い先にある目標を目指して、日々やり続ける集中力。それは爆発力ではなく、静かに炎が燃えているような湧き出る力だ。その遠い先の目指すものが、自分を揺さぶるような炎であれば、きっと持続した力を生み出すことができるのではないか。日常の静から集中力は、結局は何かをやり遂げるための持続力につながるだろう。

2021/10/18 VOOX編集長 岩佐文夫

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