【書き起こし】嘉村賢州さん「ティール組織の本質」を語る

プロから直接学べる音声メディアVOOX。10分×全6回のコースのうちの、第1話「ティール組織との衝撃の出会い」を書き起こしで紹介。未来の組織モデルとして話題となった「ティール組織」について、日本での普及に貢献された嘉村賢州氏が、その本質や未来の働き方について考察します。

(オープニングジングル)

嘉村:

皆さん、はじめまして。東京工業大学リーダーシップ教育院の嘉村賢州です。今回よりお送りする「ティール組織の本質」では、先の見えない時代の中で適用できる組織の作り方、また人の人生を犠牲にしない組織の作り方について探求していきたいと考えています。

初回ですので、私の自己紹介からお伝えしたいなと思います。私はこの15年、組織変革ファシリテーターとして仕事をしています。それはベンチャー企業とか中小企業から始まって大規模組織にいたるまで、組織風土改革であったり、新商品開発支援、イノベーションなどの支援をやってきました。元々は街づくりの文脈で、地域の学生さんから70歳のお年寄りまで集まって、京都の街の課題を考えたり、未来をどう作っていこうかという話し合いを支援してたんですけども、京都はすごく対立が多くしがらみだらけなので、そこで紛争解決の技術などを研究しているところ、ビジネスの分野でも、例えばM&Aで合併した会社とかは、親会社と合併させられた子会社が妬みあっている関係があって、そういうものを乗り越えるためにどうすればいいかっていう。企業も紛争状態ですよ、ということを聞いて、その中で私もだんだん街づくりの分野から企業にシフトして活動を進めていきました。

10年あまりそういった活動をしている中で、徐々に規模も大きくなって、上場企業さんなどもお手伝いさせていただくと、私の得意な分野は対話のファシリテーション、しかも大規模の組織でどう組織の未来を考えていくかっていうのが得意なんですけども、やっていると一定の割合で変革者というのが現れてくるんですね。勇気を持ってこの会社を良くしていくんだっていう「チェンジエージェント(Change Agent)」と言うんですけども、そういう方が生まれるんですが、どうしても、そのヒエラルキーの環境で潰れていくっていうシーンも結構目にすることになりました。潰れるだけだったらいいかもしれないですけど、場合によっては一時本当に情熱をかけるゆえに、メンタル鬱になってしまったりとか、そういうことも目にする中で、何か私の中ではそこで問いが生まれて、人類は組織の作り方を間違えたんじゃないか。少しずつ何か、このままの仕事を続けていいのかというような違和感に至ったんですね。


稲妻が走ったような出会い

当時私は自分の組織も京都で持っていまして、立ちあげて10年ぐらい経った時でして、ようやく軌道に乗りつつあったんですけども、1か月に1日、2日休みが取れるかっていう日々を送っていると、ある時オフィスに帰ってきた時に仲間が雑談しているとイラッとするわけですよ。まあ10分ぐらいならいいかなと思っていたんですが、2時間ぐらいずっと雑談していて、さすがにおかしいじゃないかっていうことを思い始めたんです。その時に何に衝撃を受けたかというと、そこにイライラを感じている自分自身に傷ついたというか、もともと私は縁があって出会った仲間を幸せにしたいという思いを持っているんですけども、本当は雑談って素晴らしいことじゃないかと。幸せの象徴なのに、それが許せない自分はどうなってるんだ、っていう考え方に対する違和感があって、思い切ってお客さんに謝って、そして仲間にも謝って、一年間休むことを決意して海外放浪に出かけたんですね。その時に運命的に出会ったのが、このティール組織という考え方で、その時にも稲妻が走ったような記憶があって、「あ、これは日本の未来を10年、20年照らすような概念じゃないか」っていう事を思いました。当時はティール組織に関しては、組織コンサルタントもアカデミックの世界も一切知ってる人がいなかった状況でしたので、単身海外で実践者を探して話を聞いてということを繰り返している最中に、日本語版が英治出版より発売されるということを知って、アクセスしてお手伝いさせてくださいという形で解説を協力させていただいて今に至る。そういう状況です。

私が全6回を通じてお伝えするティール組織とは、日本では英治出版から2018年に発売された『ティール組織--マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』で書かれた内容になります。この本は発売して2年間で約10万部を超える発行数を誇りました。海外ではさらに4年前に発売されたもので、70万部売れています。しかし驚くのはですね、この英語の本に関しては、実は自費出版から始まっており、ほぼノープロモーションで広まっているということなんですね。この著者はベルギー人のフレデリック・ラルーという方で、もともとマッキンゼーのコンサルタントでした。なので、経済界でバリバリ活躍されていた方なんですが、そんな彼はあるときに、お金を持っている人たちがさらにお金を稼ぐことに自分の人生の大切な時間を使ってていいんだろうかと、そういうような思いに至ったんですね。で思い切って勇気をもって、彼はいろんな人に「将来安定がされているのに」と言われながらも独立するんです。そして、社長向けのコーチングとかファシリテーションをしていくんですが、そこで気づいたのが、ことごとく社長が幸せそうじゃないという事実だったんです。

話を紐解いていくと、社長で何かを立ちあげている人なので、すごくビジョナリーで仲間を大切にするっていうのは聞いていくと出てくるんですけども、フレデリックに会う時には何か恐れを隠しているような、売り上げをあげないととか、従業員が主体的な考えを持ってくれないんだというべき論に振り回されているような、そんな雰囲気は出てるわけですね。逆に世界中の従業員調査、そういうのを調べてみるとことごとく働いている人たちがやりがいを持って働けてないという結果が出てるんですよ。この経済社会とか、世の中の仕組みってどうなってるんだっていうのがフレデリック・ラルーのスタートポイントだったんですね。


理想像ではなく結果として

彼が面白いのが、そこで別に仮説があるわけじゃないので、政治とか教育とか医療とか、ありとあらゆる歴史を調査して、そうすると、どうも人類は誕生して以来、ある段階の時にいろんな分野のことがガラッと変わる機会がある。そしてまた時代が経った時にある段階で一気にいろんなものが変わってるっていう、そういう歴史の傾向に気づいて、そしてまさに今の時代に少し違うパターンのものが現われ始めているから、そうするとこの違和感を感じた組織に関しても新しい切り口が見つけられるんじゃないかというところで、彼は世界中の仲間に、とにかく変わった運用している組織を教えて欲しいんだということで、エクストラオーディナリー(Extraordinary)と言うんですが、固定観念を外している組織運営のものを見て回って、そうすると、いろんなA社・B社・C社を見ていると、ある一定数、一人ひとりが本当に輝いて働いて、かつお客様から喜ばれていて、そして給料も時にはGoogle社よりも多い給料を貰っているような、そういうような組織がポコポコポコポコ見つかってくるんですね。しかもA社・B社・C社・D社は、お互いの存在も知らなければ同じものを勉強してるわけでもないのに極めて似ている。これが新しい潮流だということでまとめたのがティール組織なんですね。

今回ティール組織に関して残り5回、詳しく見ていこうと思っておりますが、そこで皆様が学んで得られることは、皆さんコロナ禍で先が見えない、今までのやり方が通用しないというものを感じておられると思います。ティール組織はそんな時に、こういう時代が読めない時こそ、現場の力で変化対応していく、そんな組織構造ですので、まさにヒントになるんじゃないかなというふうに思います。またフレデリックが追求したのは変化の強い組織というよりも、本来人間として働くことは何か? 人を幸せにしたりとか、この地球とか自然とかが持続可能な社会を作っていく時に、組織っていうのはどうあるべきかっていうものを探求し続けたのがフレデリックでもあります。そういう意味では、人間性を失わずに働くためのヒントというものもたくさん見つかるかなと思います。ティール組織自体はですね、大きなパラダイム変化を伴う概念で、経営者が相当な覚悟を持って進んでいく必要があると思いますが、これは世界中に溢れている事例を元に作ったもので、単なる理想像を言ったというよりも、こんな事例が生まれて来てるんだというところが、かなり勇気をもらえる内容になっていますので、ぜひ残りの機会を使って一緒に探求できればなと思っています。

次回からは、このティール組織を導入している企業の話を含めて、様々な角度から掘り下げていきたいと思います。ではまたお会いしましょう。嘉村賢州でした。
(以上書き起こし終了)

「ティール組織の本質」全6話 60min
1. ティール組織との衝撃の出会い
2. 組織の歴史からティール組織を紐解く
3. ティール組織の特徴①自主経営
4. ティール組織の特徴②存在目的
5. ティール組織の特徴③全体性
6. さぁ、進化の旅をはじめよう

嘉村賢州
京都市未来まちづくり100人委員会 元運営事務局長。集団から大規模組織にいたるまで、人が集うときに生まれる対立・しがらみを化学反応に変えるための知恵を研究・実践。2015年に1年間、仕事を休み世界を旅する。その中で新しい組織論の概念「ティール組織」と出会い、日本で組織や社会の進化をテーマに実践型の学びのコミュニティ「オグラボ(ORG LAB)」を設立、現在に至る。

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