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【書き起こし】岡根谷実里さん「世界の台所から社会が見える」

プロから直接学べる音声メディアVOOX。10分×全6回のコースのうちの、第1話「台所探検への道のり」を完全書き起こしで紹介。世界20カ国以上の台所を訪問した岡根谷実里さんが、台所から見えてくる人・家族・社会の様子を語ります。

(オープニングジングル)

岡根谷:

皆さんはじめまして。世界の台所探検家の岡根谷実里です。今回よりお送りする「世界の台所から社会が見える」では、世界20カ国100以上の家庭を訪れてきた私が、現地の人と一緒に料理や食事を通して体験したリアルな暮らしと文化のストーリーを語ります。


初回なので、私のプロフィールからお伝えします。大学院修了後、クックパッド株式会社に勤務。そのかたわら、休暇を使って世界各地の家庭の台所を訪れて一緒に料理をする、世界の台所探検をし始めました。そして今は独立し、料理を通して見える暮らしや社会の様子を発信しています。クックパッドニュース、日経DUALで記事やレシピを連載したり、また全国の小中学校、それから高校への出張授業も行っています。子供たちと一緒に、どんなものを世界の人たちは食べているのかなっていうことから、世界の暮らしや文化や歴史を訪れる、そんなことをしています。


今までに訪れた国と地域は60以上です。そのうち台所を訪問したものは、一例を挙げますと2021年7月現在、インドネシア、タイ、インド、中国、オーストリア、コソボ、ブルガリア、モルドバ、ウクライナ、キューバ、コロンビア、スーダン、ボツワナ、イスラエル、パレスチナ、ヨルダンなどなど、あまり旅先としては馴染みのないものが多いかもしれません。そんななかなか想像のつかない国の暮らし、どんな暮らしをして、何を食べてるんだろう? と興味をもって足を運んでいます。


土木工学から台所探検へ?


そもそも、なぜ私が世界の台所探検を始めたかと言いますと、私はもともと食の道を選んでいたわけではなく、料理人になりたかったとか、食べるのが大好きだったとかいうわけではなく、大学では土木工学を専攻していました。土木工学を選んだのは途上国に関わりたかったんですね。途上国に関わる国際協力というものに興味があり、その中で農学、教育学、土木工学、さまざまな方法がある中で、人の生活の基盤を整えることによって人を幸せにできるんじゃないか? 道路を通したり、電気を通したり、そんな技術者になりたいと思って土木工学の道に進みました。学校で学んだりしているうちに、やっぱり現場を知りたくなってきて、アフリカのケニアというところにインターンで3ヶ月ほど滞在させてもらいました。


そのインターンで滞在していた時に、私が信じていた土木工学・開発というものの犠牲に直面しました。何が起こったかというと、自分が滞在していた村、農家の家族とともに暮らしていたんですけれども、その小さな村に片道4車線ぐらいの大きな道路が通る事になりました。それによって、小規模零細農家が市場へアクセスできる、自分の農産品を売ることができて現金収入が増えるだろう、というのがあるんですけれども、実際目の前の人たちが喜んでいくかというと、決してそんなことはなくて、学校が壊されてしまうとか、校庭がどかなければいけないとか、それから家々も退去を命じられるとか、そんな今までの生活が壊されてしまうことに対して、怒ったり悲しんだりしていたんですね。その様子を見て、国全体としては大事なことかもしれないけれども、目の前の人が悲しんでしまうことを本当に自分がやりたいんだろうか、やり続けたいんだろうか、とちょっと疑問になってきました。


一方、そんな泣いたり悲しんだりしているケニアの家族との一日の中でも、必ず毎日みんなが笑顔になる時があったんですね。それが夕飯の時。決して特別なご馳走というわけではなくても、毎日必ず自分の手で身の回りの物から作り出すことができて、そして周りの人を笑顔にすることができる。さらに美味しいご飯で誰も悲しい顔にならない、決して犠牲を産まない、そんな地球上の誰もがしあわせを生み出すことができる料理の力に気付きました。


その経験からクックパッドに就職し、世界の台所探検に出かけていくようになりました。と言っても、いきなり台所探検に出かけていったわけではなく、始め数年間はサービス開発に関わる中で、やはり日々デスクワークが中心で、そんな中で自分のやっていることがどうやって本当に世界を変えているんだろうか? 人の生活を楽しくしてるんだろうか? よくしているんだろうか? と知りたくなってきて、気づいたら休暇を使って世界の台所へ出かけていくようになったわけです。


初め周りの人からは、それは仕事なの何なの? とか不思議がられたり、おもしろいことやってるねって面白がられたり、それからその世界の家庭で出会ってきたこと、見てきたもの、人々の暮らしを社内のブログで書いていたんですけれども、そういった発信を見て、やはりなかなかサービス開発をしていても触れない生の情報を知れるということに対する興味だったり、そういうことやってる人なんだなーっていう風にみられるようになり、だんだん周りの人が面白がりながら応援してくれるようになりました。なので世界の台所探検というのは、何か確固たる目的があったとか、仮説があったとかいうよりも、ただただ好奇心で知りたい、人の暮らしを知りたい、そんな思いで動き始めたというのが始まりでした。


食べるというコミュニケーション

どうやって行き先を見つけるかというと、大抵は知り合いの“つて”です。大学の後輩だったり、職場の友人だったり、それから勉強会で出会った人っていうこともあったんですけれども、現地で仕事をしている人や、現地で活動している人の話を聞いているうちに、いったいどんな暮らしをしてるんだろう、何を食べているんだろう、どんな人たちなんだろうって知りたくなって、そこから受け入れてくれる家庭あるかなと話をして、台所探検の一歩が始まります。


現地の人との連絡方法は、FacebookメッセンジャーだったりWhatsAppだったり、それからそもそも連絡手段がないタイのアカ族の村の人たちなんかは、連絡手段がないということもあって、そんなときは現地に行ってから始めました。今ももう一回連絡を取ろうと思っても、紹介してもらった人に間接的に連絡をとるというような形です。メッセンジャーでやり取りすることのいいところは、言葉の通じない人でも自動翻訳でコミュニケーションがとれることです。なので、メッセンジャーでやり取りしてて「あ、喋れるなって」思って、実際会ってみると全くコミュニケーションが言葉では取れないということも多くあります。言葉の通じない人の家庭を訪れることも多くあります。そんなときも料理をしながら、一緒に手を動かしながら、例えば指をさしたりとか、それからちょっと体の向きを変えて様子を見せてくれようとしたりとか、そんな所作でコミュニケーションが取れていたりして、やはり料理自体が世界の共通言語なんだなぁと感じると同時に、コミュニケーションの本質ってやっぱり伝えようと思う気持ちなんだなということを、そんな姿からひしひし感じます。


言葉の通じない人と打ち解ける1つの方法として、これは意識していたわけではないんですけれども、一緒に作ったものを「美味しい!」って思い切りその国の言葉で喜ぶとすごく喜んでくれて、一気に心の距離が縮まります。あえて説明してみると、自分たちの文化だったり、自分が食べてほしいとか、見せたいって思って作った料理を体の中に取り入れて、それって言ってみれば毒が入ってて死ぬかもしれないし、身体を壊すかもしれないのに、口の中に入れてくれて、体に取り込んで、そして美味しいって嘘のつけないポジティブな反応を返すってことが、すごく文化を受け入れてくれたとか、こっち側に来てくれた、というような嬉しさなのかなと思います。やっぱりそれって一緒に作ったとか、その人が大事にしているものだとか、あと一緒に食べている子供たちが喜んでいるとか、そういった雰囲気込みのものなのかなと思います。


そのように1人また1人と世界の家庭を訪れるうちに台所探検が始まっていました。次回から日本とは一味違う、日本では考えられない、そんな食文化や台所文化についてお話しします。以上、岡根谷実里でした。

(以上書き起こし終了)

「世界の台所から社会が見える」 全6話 60min
1. 台所探検への道のり
2. 人は台所に集いたがる
3. 台所は伸縮自在
4. 朝食に揚げ物
5. 食はアイデンティティ
6. 台所は文化の宝庫

岡根谷実里さん
東京大学大学院工学系研究科修士修了後、クックパッド株式会社に入社、その後独立。世界各地の家庭の台所を訪れて一緒に料理をし、料理を通して見える暮らしや社会の様子を発信している。クックパッドニュース、日経DUAL等で記事やレシピを連載中。また、全国の小中高校への出張授業も精力的に行なっている。訪問国/地域は60以上。



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