【収録裏話】山田夏子さん:夏の終わりの収録

山田夏子さんは、グラフィックファシリテーションの第一人者として知られた方です。デザイン学校の校長先生などを歴任された後、人や組織での対話を、グラフィックの力を使ってより深いものにできるのではないか。そんな動機から始められたグラフィック・ファシリテーションですが、企業などで徐々に広がり始め……‍

VOOXの収録では、なにか、途方もない瞬間に立ち会ったと思うことがあります。今日、公開された山田夏子さんの収録は、まさにそんな素晴らしい経験でした。

山田夏子さんは、グラフィックファシリテーションの第一人者として知られた方です。デザイン学校の校長先生などを歴任された後、人や組織での対話を、グラフィックの力を使ってより深いものにできるのではないか。そんな動機から始められたグラフィック・ファシリテーションですが、企業などで徐々に広がり始め、NHKのテレビ番組でレギュラー出演するようになるなどますます浸透してきて、いまでは企業などからも引っ張りだこの方です。

山田さんは、周りの人から「なっちゃん」と呼ばれています。そして、なっちゃんは実は、VOOXのヘビーユーザーだったんです。以前からtwitterで何度もVOOXの感想を投稿してくださっている。そんなことから、ユーザーインタビューをさせてもらったこともあります。今回は、そんななっちゃんが本を出版されたことタイミングでもあり、VOOXへの登場をお願いして実現しました。

ちなみに、ご著書は『グラフィック・ファシリテーションの教科書』という本で、全ページ、ビジュアルに埋め尽くされています。頁をめくるだけで楽しめる本です。なっちゃんをご存知の方ならわかると思いますが、その場にいるだけでみんなが笑顔になるような雰囲気の方です。満面の笑みで話されるその口調は、聞いているだけで暖かくなる。そんななっちゃんの本らしく、この本はどの頁を開いても、楽しいオーラが溢れています。

収録の日はあいにくの雨でした。傘をさしてスタッフの方と来られたなっちゃんは、いつも通り、初めて会うVOOXのメンバーにも親しく話しかけてくれます。毎回緊張を伴う収録ですが、出足からなっちゃんの明るいオーラに助けられ、楽しい一日が始まる予感です。

収録が始まると、普段のなっちゃんらしさが影を潜め始めました。その大陸的なおおらかさが、どこかしらお行儀の良さに変わっている。お話をお伺いすると、「用意してきたら不安が大きくなってきたんです」と仰います。普段から、人前で話すことが多い方なのに、マイクを前に一人で話すのは、どうもイメージがしにくかったようです。
それでもなっちゃんは、一話ずつ、丁寧に話をしてくれました。声なのか、話し方なのか、あるいはその言葉からなのか。温かい人柄がにじみ出て、聞くだけで優しくなれる音源なのです。なっちゃんは一話が終わるたびに、「はー」と深呼吸されます。

それでも収録は順調でした。4話目、5話目と終わり、いよいよ最終話の収録です。最後まで丹念な準備をしてきてくれたなっちゃんですが、最後の最後に言葉に詰まってしまいました。残り30秒、ここまでの60分の話を終えての、最後の締めの言葉を語る、まさにその前です。溢れ出る涙が止まらず、スタッフの方がティッシュペーパーを差し出して、背中をさすっておられます。少し落ち着いてきたなっちゃんは「いつもこれを言う時、泣きそうになるんですよねー」と泣き笑い状態。一息ついたところで、収録を再開し、最後の言葉に挑みます。なっちゃんは語り始めました。

「人間って、とても豊かな複雑さをもっていて、この複雑さを、やさしく深く分かり合える場が、もっともっと必要だと思っています。こういう対話の経験を、少しでも多くの人が経験できたら、平和ってもっともっと広がっていくんじゃないかな。そんな思いで描かせていただいています。皆さんもぜひ、身近な大切な人の声を、優しく、受け取って、描いてみてください。以上、山田夏子でした」

グラフィック・ファシリテーションを広める内側は、こんな温かい想いがあったんですね。収録という本番では、宝物をもらったような瞬間に遭遇できます。収録を終えたなっちゃんに満面の笑みが戻りました。収録の場に再び「なっちゃんオーラ」が充満しています。ご著書にサインをお願いすると、実に楽しそうに絵柄まで考えてくれます。\

 

お見送りに外に出たら、雨はすっかり止んでいました。蝉の鳴き声も聞こえてきます。傾いた日差しの中、スタッフの方と肩を並べて帰られるなっちゃんの背中を見ながら、夏の終わりを感じました。

2021/9/27 VOOX編集長 岩佐文夫

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