【書き起こし】佐々木康裕さん「『意義化』する経済とその先」

プロから直接学べる音声メディアVOOX。10分×全6回のコースのうちの、第1話「パーパスに行き着いた経緯」を書き起こしで紹介。クリエイティブとビジネスを越境するビジネスデザイナーの佐々木康裕さんが、企業におけるパーパス(社会での存在意義)の意味と力を解説します。

(オープニングジングル)
佐々木:

皆様はじめまして、ビジネスデザイナー佐々木康裕です。今回よりお送りする『パーパス、「意義化」する経済とその先』では、企業における存在意義、Purpose(パーパス)の意味と力を考えます。初回の今回は、なぜ私がパーパスというテーマに行き着いたのかというお話と、自己紹介を絡めてお話しをさせていただきます。

まず自己紹介ですけれども、私は現在はTakramというクリエイティブイノベーションファームに勤めておりますが、もともとは総合商社で8年ほど働いておりました。当時は、IT系の新規事業を作るみたいな担当させていただいていて、シリコンバレーに半年行ったりだとか、ベンチャー投資をしたりだとか、そういう仕事に携わらせていただいてました。その後ですね。新しい事業を作るのに、何かそこにメソッドとかサイエンスがあるんじゃないかということで、2011〜2012年当時、流行り始めていたデザイン思考というものを学ぼうということで、アメリカのシカゴのとある大学院に行って、デザイン思考のMaster(修士)を取って帰って来まして、それ以来Takramで働いているという、そういうキャリアになってますが、Takramで仕事をしながら、いろいろ好奇心の赴くままに色んな事をやっておりまして、その中のメインの活動の1つが「Lobsterr」と言うニュースレターの発行をやっております。これ無料で、週に一回世界中のニュースソースから、世の中の未来の変化の種になりうるような文化とか、ビジネスの未来の変化のためになるような記事を、世界中のメディアから集めて、それをキュレーションして、週に一回月曜日の朝7時に配信するということをやっています。これも今、ボリューム120を超えているので、2年半ぐらいですかね、継続させていただいてます。

ニュースレターと並行して、例えばポッドキャストをやったりだとか、実は今「Lobsterr」という媒体の書籍の準備をしたりとかしているので、Takramという活動の枠を超えて、まあいろんな活動をしているところでございます。あと、例えば他にも知り合いがやっているベンチャーキャピタルの投資先のメンターのようなお仕事もさせていただいたりだとか、グロービスさんという日本で1番大きな経営大学院がありますけども、そちらで「デザイン経営」という名前の講座を受け持たせていただいたりとかしています。あとはスタートアップの社外取締役ということもさせていただいたりとかしているので、自己紹介がいつも困るんですけども、何を意識しているかというと、個人的には大きな意味での消費者の価値観の変化と、技術の変化みたいなところを巨視的に捉えた上で、企業が何をしないといけないのかということを考えるってことに、すごく個人的な好奇心があるという、そういう人間ですね。

その中で、2019年に『D2C』という本を書かせていただいたんですけども、それも新しいテクノロジーが出てくることで誰でもブランドを始められるようになったという話と、消費者がそのブランドの作り手たちと直接的なコミュニケーションを欲するようになってきている。その欲するようになってきているところのリアクションとして、ブランドがSNSとかを介して、広告代理店とかを通さずとも直接消費者にコミュニケーションできるようになっているという側面が出てきたな、というのが見えてきたので、それをD2Cと言う切り口でご紹介したという本です。2019年に出させていただいています。なので今回の『パーパス』という本も、そういった自分の興味の延長線上で出てきたという、そういう本かな思っています。


社会課題に対するスタンスの明確化


ここから、なぜ僕がそのパーパスというテーマが、今面白いと思ったのかということをお話をさせていただきたい思います。先ほど申し上げた通り、私「Lobsterr」と言う媒体をやりながら、世界中のメディアから変化の種かもしれないなと言うニュースをたくさん拾っているんですけども、ニュースを日々キュレーションしながら面白いことに気づき始めたというのが経緯になります。例えば当時、2019年にニュースレターを始めてから、どういうニュースを私が面白がってピックアップしていたかというと、例えばLevi'sというデニムを作っている会社が、アメリカの銃を持つ権利に対して、これ非常にアメリカではセンシティブな話題なわけですけども、Levi'sは銃規制に賛成すると。で、銃を持って入店するということは許さないみたいな記事を見つけたりしましたね。その記事をピックアップした直後に、例えばAmazonが銃を含む火器の出品を禁止するということを発表したりだとか。あるいはSalesforceという、企業に顧客管理システムみたいなものを提供する会社が、火器を取り扱う会社に自分たちのサービスは使わせないという判断をしたりとか、そういうニュースを目にするようになりました。

今取り上げた3つの全ての事例は、その施策をやることで企業は売り上げを下げることがあります。だけども、あのそういうデシジョンをしているということが非常に面白いなと思ったりしました。あと違う例もご紹介すると、例えばBlack Lives Matterという大きなムーブメントがありました。あれについてもBLMが出てくる前からすごくおもしろい事例があるなと思っていたのが、人種とかあるいはジェンダーに対して、非常に消費者ブランドの姿勢が変わってきたなという、いくつか面白いイベントがあったかなと思っています。これまた別のデニムブランドでDIESELっていうブランドがあるんですけども、DIESELっていうブランドが、我々はLGBTをサポートしますっていう声明を、Instagramに発表したら、まあアメリカにも、いやLGBTなんてそんなの大事な問題じゃないだろう、っていう人達が一定程度いるので、Instagramのフォロワーが2万人ぐらい減っちゃったんですね。それもブランドにとって大きなダメージがあるんだけども、DIESELがその時に「いなくなってくれてありがとう」というメッセージを出すんですね。これもすごくかっこいいなと思うんですよね。残ったフォロワーたちはそういうDIESELの姿勢を見て、「あ、このブランドの信頼できるな」という、そういうような姿勢を持っていくということですよね。

今の話がですね、BLMにもつながるかなと思っておりまして、BLMにおいても、我々が黒人の方、あるいは有色人種の方の人権をサポートするという発信が数多く行われました。そういったブランドに対する支持っていうのが非常に大きく起きたかなと思っています。あと面白いのがですね、何も言わないブランド、何も言わない企業に対して激しいバッシングが起きたというのも、大きなBLMのムーブメントの面白いポイントだったかなと思っています。社会課題に対してスタンスを取らず、静観を決め込むという姿勢に対して、消費者が怒りの声を上げて購入をボイコットする。これ造語でBUY(バイ)をBOYCOTT(ボイコット)するというこで、BUYCOTT(バイコット)という言葉が生まれたりとかしましたけども、BUYCOTT運動が起きたりとかしました。これは消費者が企業に対して求めるものが、社会課題へのアクションっていうものを明確に求めはじめたっていうことの、転機の一つかなと思っています。


ニュースを貫く通奏低音


先程の銃の話と人種の話が、結構僕の目から見ると、深いところで繋がっているんじゃないかなということを思い始めたというのが、この「パーパス」っていうテーマを考え始めたきっかけになっているということになります。当時は「パーパス」っていう切り口はまだ思いついたりとかしてなかったんですけども、これらを貫く大きな通奏低音ってなんだろうっていうことを考え始めて、そこから半年とか一年ぐらい考え始めながら、「パーパス」というテーマに気づいたのかなと思っております。

今回の本は、岩崎さんという方との共著になってますけれども、彼は今、武蔵野美術大学の教員をされてますけれども、彼は実は私のアメリカの大学院の先輩になっていまして、彼とは普段から意見交換をする仲だったので、岩崎さんともディスカッションしながら「パーパス」というテーマが浮かび上がってきたいうのが、この本が生まれた経緯になります。というわけで今回はですね、私が「パーパス」に出会った経緯をご紹介させていただきました。

次回以降は、この「パーパス」がいかにこれからの経済活動に必要なものか、そしてそれを実践している企業の事業の貢献につながっているかなどまあ、いろんな角度から紹介して行きたいと思っております。以上、佐々木康裕でした。
(以上書き起こし終了)

「『意義化』する経済とその先」  全6話 60min
1. パーパスに行き着いた経緯
2. 「意義化」する経済とは
3. パーパスを実践する企業の強さ
4. パーパスは事業に貢献するか?
5. 企業にとってステークホルダーは?
6. 企業の力は時価総額で決まるか?何で決まるか

佐々木康裕
東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野客員研究員。早稲田大学第一文学部心理学専修卒業後、筑波大学大学院人間総合科学研究科にて博士号(心理学)取得。大学院では怒り感情の研究を行う。2012年より現所属に特任研究員として勤務。専門は職場のメンタルヘルスで、認知行動的アプローチやポジティブ心理学に基づくストレスマネジメントプログラムの開発に従事。企業向けにメンタルヘルス対策の設計支援・講演・執筆なども行う。



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