【書き起こし】朝倉祐介さん「ファイナンス思考」を語る

プロから直接学べる音声メディアVOOX。10分×全6回のコースのうちの、第一話「 脱PL脳、なぜファイナンス思考が必要か」を完全書き起こしで紹介。朝倉祐介さんご本人が、売上や利益といった目先を考えるのではなく、時間軸を将来に置いて未来を見て意思決定する「ファイナンス思考」について語ります。

(オープニングジングル)

朝倉:

皆さんはじめまして。シニフィアン株式会社、共同代表の朝倉祐介です。今回よりお送りする「ファイナンス思考」では、ファイナンス的なものの考え方、ビジネスパーソンの基礎教養として必要なファイナンス的なものの考え方を身に付けていただくことをテーマとしています。

まずは初回なので、簡単に私の自己紹介をさせていただききます。私はもともと関西出身なんですけれども、中学を卒業した後、競馬の騎手養成学校に入りまして、競馬の騎手を目指していました。そこから体格的な問題もあって騎手の道を断念した後、東京大学法学部に入りまして、在学中にスタートアップ、当時はベンチャー企業というふうに呼んでいましたけれども、携帯電話をベースにしたスタートアップを作っています。その後、大学卒業後にはマッキンゼーアンドカンパニーというコンサルティング会社で3年ほど勤めまして、大学時代に立ち上げた会社、ネイキッドテクノロジーという会社なんですけれども、この会社が資金調達をするタイミングで戻りまして、代表を務めていました。

この会社をミクシィ社に売却しまして、その後ミクシィ社の代表を務めています。当時ミクシィ社は、非常に経営状況が悪い状況だったんですけれども、まあ事業転換等々行いまして、業績が回復した後に代表を退任して、2年ほどアメリカに渡りました。そこで、スタンフォード大学の客員研究員として、スタートアップがどうすればより増えていくのか、そういったことについて研究をしております。

2017年に日本に帰国をしまして、現在、代表を勤めているシニフィアンという会社を創業しています。このシニフィアンという会社なんですけれども、スタートアップの成長支援を通じて、未来世代に引き継ぐ新しい産業を創出していこう、こういったテーマを掲げて活動しています。具体的には、スタートアップの成長支援にかかわるようなグロースキャピタルの運営、ファンド運営等を行いながら、スタートアップにリスクマネーの提供と、経営面でのサポートを行っている。こういったことを行っています。今のバッグブランドでお話をした通り、私自身はファイナンスの専門家ではありません。私自身、証券会社、投資銀行、等々で働いていた事もありませんし、大学でファイナンスを専攻していたわけでもありません。一方ですね、零細スタートアップの経営者ですとか、あるいはマザーズの上場企業の経営者、あるいは研究者として、スタートアップの活動について考える中で、ファイナンス的なものの考え方っていうのは非常に重要である、といったことを痛感するようになりました。

このコースでは私の『ファイナンス思考 日本企業を蝕む病と、再生の戦略論』という本の内容をベースにお話をしますが、こちらはファイナンスの専門知識だとか、理論ではなく、あくまでビジネスパーソンが身に着けておくべき考え方をお伝えできればというふうに考えています。


「ファイナンス思考」と「PL脳」

このコースでは、「ファイナンス思考」の対立概念として「PL(ピーエル)脳」という思考形態、ものの考え方もご説明します。「PL脳」というのは、まあ、わたし自身が考えるところで言うと、日本の多くの企業が、あるいは日本の多くのビジネスパーソンが囚われている、ある種の固定観念であり、考え方であり、またこうした「PL脳」的なものの考え方があるが故に、日本の企業の成長の足かせになっているのではないかと考える思考態度のことです。

具体的にこの「PL脳」とは何かといったことをご説明しますと、売上や利益といった損益計算書。俗に日本語ではPLと呼ばれますが、損益計算書上の指標を、目先で最大化することを目的にする思考態度、こういった考えの方のことを「PL脳」と 私は呼んでいます。

例えばみなさんの身の回りで、こういったフレーズを耳にしたことはないでしょうか? 「増収増益を果たすことこそが社長の使命である」あるいは「今期は減益になりそうだから、マーケティングコストを削ろう」または「うちは無借金だから健全経営です」、「うちの会社は黒字だから問題がない」。こういったフレーズを、ひょっとしたら聞いたことがあるんじゃないかなと思います。

これ自体、ひとつ一つをとってみると、一見なにも変なことを言っていない考え方のように思えるかもしれませんが、実はこうした発言というのは「PL脳」にかかっている方から出てくる言葉なんじゃないかなと、私自身は考えています。では「PL脳」的なものの考え方でいると何が問題なのかですが、これは目先のPLをよく見せることだけを考えていると、未来に向かって価値のある、大きな事業を作ることができない。この点にあるのではないかなと思っています。今回のコースを通じて、「PL脳」的なものの考え方の危険さ、そして同時に「ファイナンス思考」、ファイナンス的なものの考え方の重要性、この2点をご理解いただければ良いなと思っています。


なぜファイナンス的なものの考え方が必要なのか?

最後に、多くのビジネスパーソンの方、中には財務部だとか経理部に携わっている方もいらっしゃるかもしれませんが、自分自身ファイナンスに携わっていない方が、なぜ「ファイナンス思考」を身につける必要があるのか。なぜファイナンス的なものの考え方を身につける必要があるのか。その理由をご説明したいと思います。ぜひ皆さんも、なんでファイナンス的なものの考え方を身につけなければいけないのか、といったことを考えてみてください。

私自身の答えは、これは自分たちが参加しているゲームのルールを知るために、ビジネスだとか経済活動のルールを知るために、そのためにファイナンス的なものの考え方が必要なのだと考えています。これは何も、ビジネスをうまくするだとか、うまく自分たちの事業を回すため、このためにももちろんファイナンスは必要なんですけれども、ファイナンス的なものの考えという方というのは、もっとその手前、根本的な自分たちが活動しているゲームのルールを知るためだと思っています。

例えば、みなさんが今からサッカーの試合に参加してくださいと言われたとします。もちろん得意な方もいらっしゃれば、苦手な方もいらっしゃるかと思いますけれども、サッカーをする事自体は出来ると思います。上手い人であれば、ボールをドリブルして相手のゴールに蹴り込むことができるかもしれません。ですが一方で、もしも自分たちが参加しているゲームというのがトーナメント戦なのか、リーグ戦なのか、はたまた一回で終わる試合なのか、それとも続きものの試合の一部なのか、こういったことが理解できなかったらどう思われるでしょうか。おそらく非常に気持ち悪いんじゃないかなと思います。

自分は例えば営業マンだからファイナンス的な知識が必要はない。自分は多くの営業、成約を取ることができるから、ファイナンス的なものの考え方が必要がない、とお考えの方がいらっしゃるとすれば、これは、サッカーが得意で点数はちゃんと取ることができるストライカーだけれども、自分達が参加しているのがリーグ戦なのか、トーナメント戦なのか、はたまた現在自分たちが取っているスコアが何点なのか、勝っているのか負けているのかもわからない状態でサッカーに参加している選手のような、そういう状況なんじゃないかなと私は思います。

一般の財務部ですとか経理部に携わらない方が、こと細かな知識、テクニカルな知識まで身に付ける必要はありません。ですが、最低限ファイナンスのものの考え方というものを身に付けておく必要はあるのではないか、と思う次第です。このコースではビジネスパーソンの基礎教養として、ファイナンス的なものの考え方、「ファイナンス思考」を身に付けていただければと思っています。ではまたお会いしましょう、朝倉祐介でした。

(以上、書き起こし終了)

「ファイナンス思考」全6話 60min

1. 脱PL脳、なぜファイナンス思考が必要か

2. PLとBSの構造

3. ファイナンスとは

4. ファイナンスの4つの機能

5. ファイナンス思考とPL脳の違い

6. ファイナンス思考を鍛える

朝倉祐介

競馬騎手養成学校、競走馬の調教育成業務を経て東京大学法学部を卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニー入社を経て、大学在学中に設立したネイキッドテクノロジー代表に就任。ミクシィ社への売却に伴い同社に入社後、代表取締役社長兼CEOに就任。業績の回復を機に退任後、スタンフォード大学客員研究員等を経て、シニフィアンを創業。『論語と算盤と私』『ファイナンス思考』の著者。

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